海洋熟成酒ができるまで
能島海賊プロジェクトの初弾として企画されたのがこの海洋熟成酒です。
大島宮窪の海は潮が速く、その急流は海底を深く抉り、陸から程近いところであっても水深が17メートルに及びます。
「酒にとって大敵である日光がほとんど届かない海底。
水草も生えないこの海の底は酒を眠らせるのに最適ではないだろうか。」

私たちはそう考え、能島村上氏の末裔である海の男たちを船頭に酒を海に沈めて熟成を行うこととなりました。

ステップ01:酒の選定
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地元しまなみ海道や愛媛県の地酒を中心に試飲を重ね、日本酒、ワインを始めとする様々なラインナップのお酒を選定しました。
特に日本酒・梅酒については、成龍酒造株式会社、ワインについては、大三島ßみんなのワイナリーのものを用意しております。

成龍酒造株式会社は愛媛県西条市にて、霊峰石鎚山の伏流水を使用し、明治10年より酒造りを行っています。
西条市と言えば、西日本最高峰石鎚山の麓に位置する、全国的にも有名な「水の都」です。
また、瀬戸内海地方特有の温暖な気候に恵まれた道前平野に位置したこの土地は酒米の生産にも適しています。

大三島みんなのワイナリーは大島のお隣、大三島に2019年より醸造所を構えています。
大三島は『神の島』とも呼ばれ、また、村上海賊にとって縁深い島です。
大三島にある大山祇神社の御祭神は『山の神』であり、『大海原の神』であり、『渡航の神』であることは古くから知られています。
南北朝の頃より瀬戸内海の覇者となった村上海賊はこの大山祇神社に信仰を寄せ、時には連歌を奉納し武運を祈りました。
ステップ02:蝋付け作業
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水圧により瓶内へ海水が侵入するのを防ぐためにキャップ部分へ手作業での蝋付作業を行っております。

蝋付の際は温度により蝋のつく量が厚くなったり薄くなったりしますので、こまめな温度調整を行っています。
気泡が入らないよう気を配りながら蝋を付けては氷水で冷却し蝋を凝固させます。
冷却の際も逆さにした時に蝋が垂れて形が崩れないように気を配りつつ作業を行なっております。
冷却の際も逆さにした時に蝋が垂れて形が崩れないように気を配りつつ作業を行なっております。
ステップ03:実証実験
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海底環境は刻一刻と変化してゆきます。
ただでさえ、急流で世界的にも有名な瀬戸内海の海。
大切な酒たちを付けるにあたってできうる限りの準備をという事で、海洋熟 成を行うにあたり、実証実験を行う事となりました。
期間は2021年4月から11月までの7か月。
その間に瓶内への海水侵入の有無や瓶の破損、酒の熟成具合を検証しました。
結果としては、蓋部の封蝋の割れがあったものの瓶内への海水の侵入は見られず、破損も少なく終わりました。
また、熟成が進んでおり、味や香りにも良い変化が見られました。日光による黄変も見られず良い形で熟成させることが出来ました。
より万全を期すため封蝋部分の割れ対策に、蝋付を行った後に一本ずつビニールテープにて補強を行うという対 策はとる事となりましたが概ね実証実験は成功。
2021 年 11 月中旬に行う第一回漬け込みへ繋げました。
ステップ04:漬込み開始
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実証実験を受けて、酒瓶をより保護するために専用の鉄籠を作成しました。
蝋付けした酒を一本ずつ確認しながらケースに詰め、鉄籠に入れていきます。
クレーンを使用し、酒の入った鉄籠を船にのせて漬込みのポイントまで運びます。

11月の海上は気温も低く当日は風も吹きましたが、海の男たちはものともせず、互いに手順を確認しあいながら期待とともに酒を海の底へ眠りにつかせました。
海底にて温度変化の少ない中波に揺られ、熟成することでふくらみのある上品な香りとなり、角の取れた味に変化していきます。
海底環境は日々変化し、同じ海であっても同じ潮には二度と巡り合えません。
そのような中で熟成される酒にも同じ物は二度となく、まさに一期一会の巡り合わせ。
その年唯一の味をぜひお楽しみいただければ幸いです。